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【2008/09/06 06:46】 | | page top↑
[番外:革命の話をさせてくれ]

 「エルネスト・チェ・ゲバラ」がTシャツのデザインになって売れまくって久しいが、ワシの「革命」というのは、芝居熱の高まった中学生時代の読書「つかこうへい」の「飛龍伝」から単を発し、寺山修司の「若者よ、書を捨て町へ出よ」を通過し、「蜷川幸雄」「清水邦夫」の「なぜか青春時代」で、怒号のように流れる涙と一緒に完結する。

 「マルクス論」を片手に寮内にべちゃべちゃと貼られた赤ビラの説明をしてくれた、劇団時代の京大吉田寮生のお兄さんお姉さん方が、今どうしているのかとしみじみ思い出す。

 本当はワシの父の時代がその全盛であって、ワシにはちょっと程遠い「学生運動」。
 ワシの学生当時には「革命」という言葉は、それはそれは輝いて見えた。
 今はただの「懐古主義」な発想の一つで、何故あんなにアンダーグラウンドな思想を強く望んだのか自分でも分からない。

 父は当時の思想の強かった京都という場で、闘争の激しかった大学の法学部に行き、終わりかけていた学生運動の時代の波に飲まれた。
 一日中大映映画のエキストラでバイトして影ではしっかりと勉学に励み、ヘルメットを被って拳を突き上げ大声を張り上げた学内の長い小道を闊歩した。
 最後には何も無かったように、ボサボサの髪を七,三に分けて企業に就職する。
 彼もあの当時の典型的「革命の子供達」だった。

 父にしてみれば、ただの「青春」の一コマで大それた事でもなんでもない。

 こんな歴史を知ったのは最近の事だが、ワシにもしっかりとこの血が流れていたようで、アングラな事ばかりを好み、自分の意見以外のものは排除して来た学生時代。
 わしの中では「革命」とは、決して無関係なことではない気がする。
 ワシにはあの時代が羨ましいのだ。バカバカしい事に一身を投じられた最後の時代のように思える。

 チェ・ゲバラとは、カストロと一緒に1959年のキューバ革命を成し遂げた男。
 戦場においても非凡な指揮者であり、政治的にも特異な才能を発揮した男。
 長髪にベレー帽、ヒゲに戦闘服のまま経済使節団長として西欧各国や日本を歴訪し、一躍世界中の注目を集めた。
 当時、ハイスクールにいたジョン・レノンは「あのころ世界で一番かっこいいのがエルネスト・チェ・ゲバラだった」と回想している。

 なぜ、こんな事を思い出すのか。

 ソフマップに機械を売りに行って「モード学園」の傍のコンビニに寄った。
 コンビニの前で座ってたむろして、当然のようにタンを吐きタバコを踏みつけ笑い転げる生徒達。

 恐らく、若いモノ達の行動は昔と何一つ変わらない。
 そこに無いのは「革命」とよべるような、彼らの中の問題のような気がした。
【2008/04/16 23:46】 | 蜷川幸雄 | trackback(0) | comment(0) | page top↑
[番外:寺山修司]
 ジュンク堂で立ち読みしていると「虚人 寺山修司伝」という単行本がでていた。
 カバー広告に「模倣で作り上げられた芸術家、寺山修司」と書いてあって、まだそんな事を言っている人がいるんだとボーと眺めてしまった。
 私は寺山修司に思春期にハマってしまった口なので、偏った意見になると思うが引っ掛かったので書いておこうと思った。

 私は、寺山修司主催の「天井桟敷」の横尾忠則さんのチラシデザインを見てデザイナーを目指した。「天井桟敷」と聞いて分る方なら、どれだけアングラなのかお分かりだと思う。傾倒していた私はその頃、思考そのものがどっかに飛んで行っていたので、高校も半分程しか行かなかったし、役者からデザイナーに転向しなければ今頃何をしていたのかは定かでない。
 
 寺山修司は1970年代「演劇ゲリラ」と呼ばれた。面白い試みの一つに「市街劇」というものがあった。上演前に客には地図が渡され、街の中の「舞台」を探すというもので、それは民家のちゃぶ台のある部屋だったり、銭湯だったり、役所の中だったり、倉だったり、途方もない構想で未だ日本で同じ試みは無いと思われる。

 彼は前々から「模倣犯」と言われている。確かに短歌や俳句、ギリシャ神話からの引用は、現在でもかなり言われていてその正当性には意見が分かれていると思われる。
 芸術をモノとして捉えた場合の「著作権」問題は避けては通れないと思うが、精神性の部分で書きたいと思うので、浅はかな論見である事はお許し願いたい。

 ある意味、芸術は模倣から始まると思っている。

 確かに寺山修司は盗用が多いのかも知れない、そこはよく調べている専門家に任せる。しかし寺山修司の世界の中ではそれらは混沌としたカオスの中に浮遊する一遍のチリのように思う。

 例えば、尊敬している人の作品の構想を少し真似てみる、そのエッセンスの注出によりオマージュとして一つの作品に仕上げた事は「絶対悪」だろうか?その作品を賞賛する事はおかしな事だろうか。果たして美しい物を美しいとシンパシーを感じ、それを模写する事が悪か?類似性を求める事は悪か?

 恐らくは一から十までの全くの盗用を自分の作品だと主張した時に「悪」が始まるのだと思う。
 わたしは「模倣だ模倣だ」と騒ぎ立てる方々の胸中が分らない。
 確かに度合い問題はある。しかし模倣=偽物芸術家のような流れは、それはあまりにも文化的素養が乏しくはないだろうか。

 先日仕事で、ある料理家の方とご一緒した際に、出されたレシピにかなり似たレシピがある事を指摘した編集者がいた。その責任感は素晴らしいが、私はディレクターとして料理家の彼女の言葉にとても感銘を受けてレシピ変更はしなかった事がある。
 「料理って世界中の人達が毎日毎日つくっているんです。私が美味しいと思っている料理を、今日同じ時間に考えついた人がいたとして果たしてそれは不自然でしょうか?それに私が作れば私の料理にしかなりませんので同じにはならないと自信を持っています」。
 わたしはこう捉えた。
 隣の誰かが作ったおいしい料理に自分なりの主張を加える、そこから脈々と受け継がれオリジナルエッセンスが加えられ、料理の文化が生まれたじゃないのかなと。
 芸術はどこか似てはいやしないのか?

 意見は色々あるから面白い。異論反論あるのは当然。
 一応その本は買ったが、まだ目を通していない。

(2005年9月12日)

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【2008/01/01 00:00】 | Other | trackback(2) | comment(0) | page top↑
27.血の婚礼
■原作/フェデリコ・ガルシア・ロルカ
■台本・演出/白井晃■音楽/渡辺香津美■出演・森山未來/ソニン/江波杏子 他
総合★★★☆☆ 演出★★★★★ 役者★★★☆☆ 音楽★★★★★


 この芝居には参ってしまった。

 久しぶりに白井さんの演出モノを見たが、「遊機械全自動シアター」以降の、力の入った演出が素晴らしい。

 渡辺さんのギターも、白井さんの音楽に対する造詣の深さが伺い知れるし(かずみちゃんのライブに昔よく行ったなぁ)、歌も踊りも違和感も無く、渡辺さんの生演奏の起用には、演出家としての腕の高さが日本最高峰であるとも思える舞台。

 舞台美術もむしろシンプルに仕上げた事で、荒々しいアンダルシアの土を感じさせる。
 芝居の台本も舞台構成も生っぽい照明も、全て素晴らしい。

 森山君も頑張っているし、特にソニンちゃんの芝居の上手さは秀逸で、身のこなし、発声、表情、どれをとっても100点なのだが、どうしたものか。
 
 正直なところ、この二人が主役に合わない。
 芝居の上手さは秀逸で舞台はほんとうに素晴らしいのだ。
 だが合わない、彼らには合わないのだ。

 抗えない波に飛び込むだけの危うさと決意。
 守る立場と、押し出す立場。
 役の位置づけがココまでしっかりとあると、役者間でも憎悪の喪失をしないためにも、一人一人が相手役に対して的確な感情を持ち、且つ狂っている面も演じねばならない。
 今回の舞台の役者さんは、演じるのが難しかったと思う。

 森山君には女性を奪い取る男の土臭さが感じられず、奪ったのか人生に抗えなかったのか、とにかく若過ぎる。踊りが上手くて、男の猛々しさとダンスは別物。
 奥さん役の方との釣り合いがかなり不味く、彼が悪いというよりこの配役自体なぁとは思った。

 ソニンちゃんもとても芝居は上手いが、骨が太すぎるきらいがあり、どうみても森山君とは「離れられぬ運命」がそこにあったとは見れない。
 進めば進む程、しっかりした姉と無気になっている弟に見えて来て、こうなると舞台に集中出来ない。
 しかしながら、彼女はこの舞台以外で必ずや大成するに違いないので次が楽しみ。
 
 白井さんが配役を決めたのでは無いかも知れないが、コレばっかりは、芝居が役者を選んでもいい舞台だっただけに、ほんとうに勿体ない。
 
 果たしてどうして判断すればいいのか分からないが、命を掛けてその愛に興じるなぞ、いまの日本では死後に近い。この難しいテーマを無理無く超えた逸品でもあるし、今のコギャル達はこういう芝居を見た方がいい。

 どうしたものか。この舞台の評価はほんとうに難しい。
 別の配役で、もう一度見たいのが本音かな。

 しかしソニンちゃんには驚いた。
 江波さんにも負けない芝居力には、久しぶりに上手い芝居を見たなという感じ。
【2007/10/22 13:54】 | Other | trackback(0) | comment(0) | page top↑
[番外編]清水邦夫
 先だって、清水邦夫の「あらかじめ失われた恋人たちへ」の映画感想が書いてあった事に感動したとのメールを頂いた。わたしも観ていた方がいたのかと大変に嬉しかった。
 ほかにも蜷川さんの舞台への考察を纏めてほしいとご連絡下さった、K社のOさんもありがとうございます。このようなメールは大変に励みになります、ありがとうございました。

 「タンゴ冬の終わりに」の舞台も含め、よい舞台たちが終わって久しいが、本業の為に落ち着いてちゃんと感想を纏められる時間が無く、最近の観劇記は中途半端に走り書きが多かったので、自分で読んでいても何の気合いも入っておらず面白くない。時間を取って書き直そうと書き始めた何本かを消してしまった。
 いつになるかわかりませんが、落ち着いたらじっくりと書き始めようと思います。
【2006/12/11 19:24】 | 蜷川幸雄 | trackback(0) | comment(0) | page top↑
26.コクーン歌舞伎「四谷怪談」
●スタッフ 作/四世鶴屋南北  演出・美術/串田和美
●出演 中村勘三郎、中村扇雀、中村橋之助、坂東弥十郎、笹野高史、
中村七之助、片岡亀蔵、坂東新悟 ほか
総合★★★☆☆ 演出★★★☆☆ 役者★★★☆☆ 美術★★★★★


 襲名後初のコクーン歌舞伎となる中村勘三郎をはじめ、中村扇雀、中村橋之助、坂東弥十郎、笹野高史、中村七之助、片岡亀蔵、坂東新悟ほか豪華な顔ぶれがズラリと勢揃いした、この舞台。

 演出の串田和美さんといえば、わたしの記憶では「自由劇場」の串田さんという事になる。
 「もっと泣いてよフラッパー」「上海バンスキング」、吉田日出子の自由劇場。笹野さんは、自由劇場でサックスを吹いていたし、今人気の日向さんはなんだったか。当時、私が自由劇場に入りたい一心で東京に行くと喚いていた高校時代を思い出す。

 その串田さんが、94年、中村勘三郎(当時は勘九郎)に話を貰って、東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで始めた「コクーン歌舞伎」。
 絶賛の嵐とともに回を重ねてもうかなりになる。7、8作はいったか。

 現代劇に歌舞伎を融合したのか、「優しくひもといた」というべきか、若い世代も引っ張って強力な求心力の元に今も続いている。

 わたしも何度か行った事があるのだが、作品その前に、BUNKAMURAに関しては桟敷劇場で全く言う事は無いが、前回の大阪公演、扇町公園に解説された芝居小屋には一つ言いたい。
 あまりに当時の時代小屋の模倣にこだわりすぎたのか、その木席の狭さに、体の大きいうちの主人は体を悪くしてしまい、首も寝違えてしまった。
 芝居を観に行って体を悪くするなどあってはならんのだ。これだけは苦言させて頂きたい。

 で、やっとこさ芝居の事だが、「南番」の20トンの水を使った迫力満点の初演ベースはとても壮大で素晴らしかったのだが。今回の新バージョン「北番」は音楽・配役・ストーリーまで新構成となり、南番では上演されないシーンも含めた新バージョン。
 私は前回の方が良かった。

 今回は気を照り過ぎ、現代劇により近くなるにつれ、歌舞伎調の芝居が空々しく見えて来て、やり過ぎの感が、どうしてもあった。

 そりゃ、舞台美術、転換、脚本に至るまで、すべて分かり易く、迫力あって申し分は無いのだが、歌舞伎を見ている者には、どこから、コチラも見る目を切り替えれば良いのか。
 笹野さんはそもそも歌舞伎役者では無いのだから、いたって普通に話されるのは良い事でそれを突っ込みたくはないが、勘三郎、七之助の主役メンバーの意味が薄れるというか、節回しを聞くだけで心地よい歌舞伎が、何か空々しく聞こえてくる時点で、そこだけは、なにか違うような気がする。

 ただ、場面ごとでは、斬新な歌舞伎とも見れるし、ボクシングのように点数をつけていくとすれば、大方がしっかりとした歌舞伎で、それも大勝ち状態なので、さすが勘三郎さんである。

 役者さんはどの方も適役であるし、ベースが歌舞伎であるので、私に評する事など恐れ多いが、一人だけ書くとすれば、特に七之助さんの活躍には注目したい。

 七之助君の騒動に混乱した加減もあった去年の挽回か、素晴らしい女役に、玉三郎さんの面影さえも観た気がする。
 余談だが、先日「鼓童」のTV放映をちらっと観たが、玉三郎さんは天才である。
 立っているだけで、アマテラスオオミノカミだと解るあたりは、凄いとしか言いようの無い事なのだが、七之助君にはこういう役者さんになる素質はあるように思うので、悲しげな憂いを秘めた役者魂をいつまでも大切にしてもらいたいものだ。

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【2006/08/04 20:40】 | Other | trackback(0) | comment(0) | page top↑
25.梅ちゃんの青い迷宮
作・演出=食始
【キャスト】 梅垣義明
総合★★★★★ 演出★★★★★ 役者★★★★★ 美術★★★★★

 一言素晴らしい、そして美しすぎる。

 梅ちゃんは通算5回目。ワハハも含めると10回は超える程好きな訳なので、常連である。

 長らく観劇機会が無かったが、前回、京都のタクタクでのミニライブからおよそ5年。その前のサンケイホールの時には、龍角散、やら輪ゴムやら、水やら何やら飛ばされて喜ぶ部類の私達は、大ファンなのだ。
 にも関わらず、今回不覚にも開場に遅れるという失態で
「あんた達!遅れて来たんだから罰ゲームよ!上がって来なさい!!!」と梅ちゃんに呼ばれて非常にオイシかった。

 今回の客席への飛ばし物は、鈴に、花吹雪に、水の入った風船に、雨に、ちくわに、ペンライト、と盛りだくさんの中、死ぬ程笑って終わった。

 しかし梅ちゃんの歌や、ドラッグクイーンの衣装はホント素晴らしくなっていくのに、滑舌は毎度悪いよのね。でも面白いから許してあげる!

 ホントに死ぬ程笑える舞台なので、死にたい気分の人は絶対行くべき。

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【2006/07/27 00:33】 | Other | trackback(1) | comment(0) | page top↑
最近、舞台を観ていない
 最後に「12人の優しい日本人」を観て以来、忙しさもあるのだが行きたいと思う舞台がナカナカ見つからない。
 歌舞伎以外では観劇出来ておらず、もう半年以上もたっている。

 今年はいい役者さんが、舞台と縁遠いような気もする。早く舞台を観に行って、ブログを復活させたいものだ。
 しばし、以前に寺山修司氏のことを書いたエントリーを再掲載でお茶を濁しておきます。

 武田真治さんの「身毒丸」の観劇記に関して、実に不思議なのだがいまだにこのエントリーに関してだけは反響があって、色んな方からメール頂だく。
 ファンの方々含め、演劇関係者の方々からの、様々な角度から感想を頂いて、本当に有り難いことだったなと思います。改めて感謝致します。

 今後は、7月に「梅ちゃんの青い迷宮」(チケット入手済み)。シアターコクーン「タンゴ冬の終わりに」を観るかな、大阪に来るまで待つかと思案中。「奇跡の人」は大竹しのぶさん以上の方が現れるとは思えないので観ないつもり。「あわれ彼女は娼婦」は、チケット購入を忘れ、すでに完売、などなど。

 梅ちゃんはもう何回目なんだろう、ワハハも入れると20回位。でもかなり久しぶりで、1999年に、輪ゴムを飛ばされ、豆を飛ばされ、ジュディオング20m版の羽に巻き込まれ、龍角散を頭から掛けられて以来の観劇です、嬉しいなぁ。
 ワハハは、発作のように突然観たくなる劇団。今回はどんな大暴れなのかしら。
【2006/06/19 16:19】 | Other | trackback(0) | comment(0) | page top↑
24.12人の優しい日本人
作・演出=三谷幸喜
【キャスト】 浅野和之/石田ゆり子/伊藤正之/江口洋介/小日向文世/鈴木砂羽/筒井道隆/生瀬勝久/温水洋一/堀内敬子/堀部圭亮/山寺宏一
総合★★★★★ 演出★★★★★ 役者★★★★★ 美術★★★★★

 一言面白かった。そして素晴らしいコメディだった。

 映画はもう10年前に制作されているし、舞台に至っては15年ほど前になる。運良く両方見ている私だが、今回も文句無しに素晴らしかった。
 効果音も無い、音響も無い、照明効果、舞台展開も全くない、そして12人は全員ずっと出ずっぱり。
 こんなに前に初演されたとは思えないほど話題がタイムリーだし、笑いもこんなに風化しない戯曲は珍しい。
 1月11日、本当に運良く大阪公演シアタードラマシティーの一番前で観た私は、本当に素晴らしいモノを観たと断言させていただく。「おもろすぎるやないかっ」と心で何度も呟いていた舞台は本当に久しぶりである。

 映画ともほぼ同様の台詞なので展開は全て熟知しているし、映画版のキャストも良かったと断言出来ていたので、果たして新キャストはなどと思いはしていた。しかし、正直戯曲が素晴らしいため、自分で書かれた戯曲だが三谷さんも何の心配もなかったのだろうと予測する。
 役者さん達の方が何度も成功している舞台だけに、果たしてうまく行くのかと心配されたかもしれないが、誰をとっても何処にでもいる陪審員であったことも大きい。
 稽古前にはわざわざ三谷さん作で犯罪映像まで製作し、それを観た役者さんたちに実際に陪審員ごっこをさせていたりという事があったそうで、そこは三谷さんが役者を自由かつ意のままにあまりにも上手く、役者さんを操っていたように感じる。

 まずキャスト上は、気の弱いおじさん役が筒井さんに変更されていたところが大きな変更だったが、筒井さんの天然ぶりには誰も勝てないだろうと推測するので、あれは当たり役。   
 偽弁護士役は豊川悦治さんの役代わりで江口洋介さんがやられたのだが、舞台初登場とは思えない間合いぶり。キツく書けば、一人だけ「間」が違っていて観ているこっちがドキドキしたのだが、これは作戦だったのか???その分かなりリアルでしたね。
 やはり江口さんは格好よくて「やっぱ格好ええ感じにもっていったんやなぁ、ちょっと残念かなぁ」と思っていたが、最後に「実は、びびりながら弁護士を演じていたんですよ」と他の人達に台詞で言う役柄の設定だったので、最後の最後に気の弱さもチラッと見せられて「こんな気の弱さも演じる事が出来る役者なんや」と思った。

 舞台を観る前に一番気になっていたのは、映画版で一人有罪を言い続ける相島さんのハマり役だった中心的キャスト。今回は生瀬さんの配役だったが、いつもの彼独特のハイテンションな芝居は究極に押さえられ、いつもにない真摯な表情に驚いたし、ピッタリとハマっていた。今までの生瀬さんの中で一番。「メディア」よりもずっとずっと良いと思うな。(正直、「メディア」はいつ笑いを取ろうとされるのではと不信感で観ていた事を謝りたい 笑)

 そしておばさん役の元劇団四季の堀内敬子さんは、本来綺麗な人なので映画版で林さんのおばさん役はしんどいのではと思っていたが、三谷さんに発掘されたのか素晴らしい間合いでキーポイント役者。

 石田ゆり子さんは綺麗だけで充分だったが、この舞台はマイク無しの地声での舞台だったので、正直声量が一人だけ小さくて恐らく会場後ろの方には通じなかったかも。
 山寺さんの声優ぶりにはいつも感嘆していたが、俳優もピカイチ。
 温水さんはおもしろすぎる。
 堀部さんは、役柄上もっと話し合いに不真面目な感じでも面白かっただろうが、姉歯建築士の落書きには卒倒するほど笑った。
 いや、全て書かないがみなさん、役を掴みに掴んでいてホントに面白かった。鈴木さんだけが役柄の背景が見えない感じだったのが、惜しいと言えば惜しい。
 因に日向さんは、「自由劇場」時代から本当に好きな役者さんである。

 映画版では「若貴兄弟」で語られた時勢ネタは「琴欧州ネタ」に変えられ、なにがなんでも「相撲ネタ」にしたかった三谷さんに意地も見受けられ、そこにも笑った。

 前にも書いたが、三谷さんの舞台についてはいつもあまり書けない。
 それは私がファンだからという事はあると思うが、三谷ワールドは考えさせられる部分があるようで無い。これは褒め言葉である。
 それは全てが「コメディだから」という言葉で終われるからなのだが、批評潰しともいえる彼は確実に100年後にも名前が残る劇作家だと思う。

 しかし、どの三谷さん作品を観ても、「いつか三谷さんが舞台上に飛び出してくるのでは」といつも妄想してしまうのは一体何故なのだろう?(カーテンコールで場をさらって行く事はあっても、実際にそんな事は無いのだが)

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【2006/03/02 22:48】 | 三谷幸喜 | trackback(0) | comment(2) | page top↑
23.キッチン
[作]アーノルド・ウェスカー [改訳]小田島雄志 [演出] 蜷川幸雄 [出演]成宮寛貴/勝地涼/高橋洋/須賀貴匡/長谷川博己/杉田かおる
総合★☆☆☆☆ 演出★☆☆☆☆ 役者★★☆☆☆ 美術★★★☆☆

 アーノルド・ウェスカーの『キッチン』。
1959年ロンドンで初演以降、世界22ヶ国、53都市で上演されてきたイギリス現代演劇の傑作らしいが、これはヨーロッパ文化圏でないと理解されるのは無理だと思う。
 いくらあらゆる世界の縮図といっても、自分たちの文化になじまない物に共感する事でさえ難しい。

 まず日本がマイノリティが集合する国ではない事。
 そして本来の「差別」という殺伐とした単語を理解出来ない事。
 ヨーロッパの場合「差別」ではなく、ある一定の人達に対して「種別」している感覚もあり、その現場を目の当たりにしても日本人には「差別」された彼らの本当の心情は分からないと思う。

 そして、役者さん達が何処の国の設定なのか全く見分けがつかない上に、何カ国語もの言葉が飛び交い、舞台は中央に配された舞台では「見にくい、分かりにくい、聞き取りにくい」の三拍子。
 本格調理実習にまで行った調理のパントマイムも、水は出るのに物は無いなど矛盾点ばかりが目立ちで、ヨーロッパの大衆シーンの演劇に首を突っ込むのは力量以前の問題であったと思う。

 北野武の映画もそうだが、ヨーロッパには独特の潜在文化と意識があって、それが「個の精神性美意識の高さ」。これは日本人の持つそれとは比べ物にならない上に「儀」の上に成り立つ日本のモノとは相容れない。礼儀文化の無いところでの話を理解するのは至難の業である。

 この舞台を日本で成功させるには、まずは役者の見分けをかなり分かりやすくしていただく事かなぁと思いましたよ。

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【2005/12/21 15:34】 | 蜷川幸雄 | trackback(0) | comment(0) | page top↑
22.コンドルズ "TOP OF THE WORLD"
コンドルズ=近藤良平を中心に特異な身体とユニークなキャラを持つ男性のみで結成されたダンスカンパニー。
総合★★★★☆ 演出 役者 美術の評価は今回なし

 コンドルズは評価するモノではないですね。「梅ちゃんの青い部屋」もそうだけど、とりあえず楽しむこと。
 ショーアップされたオフブロードウェイやオフオフブロードウェイの例えば「ブルーマンショー」などの観客巻き込み型のテンションに似ていて、ダンスの実力のある方たちがアグレッシブにそしてシニカルにダンスを見せたかと思うと、映像や人形劇やショートコメディーも風刺もふんだんに盛り込んで、これをあ〜だこ〜だというのは間違っているように感じるので、何も書けません(笑)。
 世界公演も好評だけど特にロサンジェルスではダフ屋まで出る盛況ぶりで「今の日本の縮図」とまで題されたそう。それは言い過ぎだと思うけど、世界に通じる舞台である事は確か、普通の男の人たちが学ラン着て踊る感覚が学園祭みたいでなんともカッコいいですね。私も向こうで公演されているコンドルズを是非観たいな。
 
 しかしここの主催の近藤良平サンは育ったのがペルーやアルゼンチンなどというだけに感覚が日本人離れしていて、ダンスが一種異様なんだけど、ずっと繰り返しやられると体内リズムをいじくられているよな、こっちまでもが踊りだしたくなる何かがありますね。寺山修司賞を取られただけのことはあるね。

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【2005/12/01 01:46】 | Other | trackback(1) | comment(0) | page top↑
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